量子力学はミクロな世界を記述する物理学の一分野ですが、私たちはミクロに対してマクロな世界を生きているので量子力学の見出す結果は直観とは大きくかけ離れたものが多いです。
そのため量子力学を理解するのは大変難しいと思います。
そこで今回はおすすめの量子力学のテキストを紹介しようと思います。
なおこの記事は諸学者に向けた内容だという断りを入れておきます。
テキストの選び方
難易度を合わせる
私の、ほかのおすすめテキストシリーズでも言っていることなのですが、テキストを選ぶときはまず難易度に注目しましょう。
初学者なら入門を、一度習ったのなら基礎や中級のを、ある程度理解が深まっているのならすすんだ内容が書かれているものを。という風な基準を設けて選ぶと失敗しにくいです。
講義の流れに合わせる
もし単位や試験対策が主な目的ならば講義に合わせた選び方をするのも大事です。
量子力学なら、前期量子論から始めて解析的な解き方(シュレディンガー方程式)をメインにした講義をする先生もいるでしょうし、量子力学の公理からスタートさせたりブラケット記法を中心に進める先生もいるでしょう。
テキストによっては代数的なアプローチをあまりしないものもありますので、注意が必要です。
どこまで抑えたいか把握する
テキストはそれぞれ網羅性が異なります。よくあるのはスピン演算子もしくは摂動法までカバーしているテキストです。しかしスピンまでだったり、相対論的量子論の入り口まで踏み込んでいる場合もあります。
ほかにも量子統計に触れているテキストがあったり、前期量子論を詳しくカバーしているテキストなど、比較してみると以外と網羅性が異なることに気が付くと思います。
前野 よくわかる 量子力学
量子力学を学び始めの方はひとまずこの本を据え置きながら勉強するといいと思います。
この本は何といっても丁寧さがうりです。適宜図も入れてくれているので、視覚的なわかりやすさもあります。
著者の前野先生は、サポートページをウェブ上に設けてくれているので、それも活用することができます。
原島鮮 初等量子力学
個人的にベーシックなタイプのテキストだと思っています。解析的な解き方がメインです。
前期量子論から入り、シュレディンガー方程式を使って井戸型ポテンシャルや調和振動子、水素原子モデルなどを一通り解いた後、量子力学を公理的に再構築します。その後ブラケット記法を導入し、軌道角運動量やスピン角運動量へ話が及びます。
しかし、ブラケット記法は導入するもののあまり使わないので、ブラケット記法について勉強したい方は後述のテキストをお勧めします。
清水明 量子論の基礎
東大1年生向けの講義をまとめたというのが『量子論の基礎』です。私もはじめての講義でこのテキストを使いました。個人的にはよくわかりませんでしたが、この本はブラケット記法をメインで使うため、ブラケットにはなれることができました。
基礎とは言いますが、後半ではベルの不等式について考察します。ほかの量子力学入門書にはあまり見られないですね。
J.J.Sakurai 現代の量子力学
こちらもブラケット記法から入ります。「わかりやすい!」という学生が多い印象です。
個人的には難しかったです
猪木・川合 基礎 量子力学
難しいという声が多いこのシリーズですが、初学者に合わせて基礎版も出ています。とはいえほかの本よりも難易度は高いかもしれません。
しかしこの本をお勧めしたい大きな理由は、演習問題が豊富であり、網羅性も高いところにあります。演習問題は本文途中で出題され、問題を解きつつ読み進めるスタイルになっています。そのため重要部分はおのずと自分の手を動かすことになるわけです。
この本は解析的な解き方はもちろん、ブラケットを使って軌道角運動量を扱ったり、ハイゼンベルグ描像やユニタリ演算子を用いた代数的表現を丁寧に教えてくれます。
おわりに
以上で紹介は終わりとなるのですが、私のほかのテキスト紹介記事よりもボリュームが抑えめとなってしまいました。
というのも大学院生となった現在の私はほとんど量子力学を扱っていないのです。大学院試験を最後に量子力学とはほとんど顔を合わせていないので、紹介できるテキストが少ないわけなんです。
そのためディラックの量子力学や、ランダウの本は読んでおらず、そういった難易度が高めな本はおすすめもレビューもできない状態です。
しかし単位取得や大学院試験を考えている方には参考になるようなラインナップになったと思いますので、書店に行った際はぜひ目を通してみてください。
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