酷暑続く今日この頃、いかがお過ごしでしょうか。
大学の講義では、テキストが指定されている授業もあれば、指定されておらず教員がつくった資料をもとに授業が進む講義があります。
どちらにせよ、教員の教え方が上手な場合とそうでない場合で理解度やモチベーションは大きく変わってきますよね。そんなときにお世話になるのが参考書です。
私は複数の参考書、だいたい2冊、を用意して自学することが多いです。テキストが指定されているときはそれに加えて参考書を1冊。教員の資料を使うような授業では1冊もしくは2冊といった感じでしょうか。
片方でわからなかった場合、もう1冊の方を読んだら理解できた。ということが幾度もあったためこのように参考書を複数冊持っています。
今回は私がお世話になった古典力学の参考書を紹介しようと思います。
原島鮮 力学Ⅰ 質点と剛体の力学
力学の中でも基礎に値する質点と剛体の力学について書かれた本です。
この本はほかの専門書と異なり、余白が多くて見やすいです。ランダウの本を読んだ方はよくわかると思うのですが、一般に専門書というのは文字がぎっしり詰まっていて読みにくいです。しかしこの本はレイアウトが良いのか見やすいです。
まず高校物理ではあまり深掘りしなかった慣性系と慣性の法則ついて深掘りされます。力学が好きな方は見入ってしまう内容です。また座標変換についてもほかの本より詳しく説明されている印象がありました。
最初の方でベクトルや微分などの必要な数学の知識を述べていますが、これだけでは理解しきれないと思うので、高校数学までの知識はあらかじめ持っていた方が良いです。
微分方程式については、力学で使う分には間に合っているかもしれませんが、あらかじめ数学の本を参考に常微分方程式についての知識や解法を身につけておくと、数学に困らず進むことが出来ます。
易しい入門書から少しステップアップしたい方におすすめ。
原島鮮 力学Ⅱ 解析力学
先ほどの力学Ⅰの続きです。こちらは解析力学について書かれています。
ダランベールの原理、仮想仕事の原理、変分法、ラグランジュの変分方程式、ハミルトンの原理と話が進んでからラグランジュの運動方程式を導きます。
順序立てて説明されていて背景もわかるので大変見通しが良くなります。ただし変分法に関しては著者もことわりをいれているのですが、あまり厳密な説明はされていません。しかし解析力学を学ぶ分には問題ないでしょう。
最後の方では特殊相対性理論についても記述されています。
個人的に、正準変換の章がとても難しかったです。
藤原邦夫 基礎物理学1 物理学序論としての力学
私はこの本と、原島さんの本と2冊をメインにして力学を勉強しました。
『物理学序論としての力学』は原島さんの本のような見やすさはありませんが、数学がとても丁寧に説明されています。力学で使う微分方程式の知識なら、この本を参考にして習得することが出来ます。
惑星の軌道方程式を求めるときの微分方程式の解法はとても丁寧でした。
最終章では解析力学についても軽く触れられています。しかしこの本で解析力学をマスターするには内容が薄いです。
戸田盛和 物理入門コース1 力学
有名なテキストです。地方の市立図書館でも場所によってはおいてあるイメージがあります。
私が履修していた講義でもおすすめの参考書としてこの本が挙げられていました。大学の古本市で出品されていたので試しに買ってみました。
実を言うと力学は講義資料と上述した原島さんと藤原さんの本でほとんど解決していました。しかし、こちらの本でもお世話になったことがあり、その2冊とはまたテイストが異なっているので紹介しようと思いました。
図やイラストが多く載っているので、力学のイメージがつかみやすいと思います。この本も原島さんの本のように、見やすいレイアウトになっています。
しかし数学の説明は藤原さんの方が丁寧な印象がありました。大抵の大学図書館には置いてあるので、まずは借りてみるのがいいでしょう。
小出昭一郎 物理入門コース2 解析力学
先ほどの力学と同じシリーズの解析力学です。
原島さんの解析力学は前述の通り、ダランベールの原理、…、ハミルトンの原理を持ち出してからラグランジュの方程式を導出しましたが、こちらの本は先に一般化座標と一般化運動量を定義しそこを出発点とします。途中一般化力などを経由してラグランジュの方程式を導出する流れ。
変分原理はそのあとの章で解説されています。原島さんの解析力学とはうまい具合に様式が異なっているので、一方でわからなかったら一方を参考にすると良いでしょう。
最終章では力学系の振動についてまとめられています。考える系が複雑になるとニュートン力学では手に負えなくなるのですが、そこで解析力学の出番という形になります。この本ではそれがゴールになっていると捉えると、解析力学の勉強に対する見通しがよくなります。
おまけ:力学の勉強について
古典力学の中でも基礎とされるニュートン力学は、ニュートンが微分積分を発明したことで大成したと言っても過言ではありません。
なので、大学の力学を学ぶのであれば初等的な微分積分は一通り出来るようにしておきましょう。ここでいう初等的というのは、特殊関数や複素数まで拡張されないような微積のことです。
高校物理のようにして解こうと試みた学友がいましたが、空気抵抗や摩擦のあるバネの振動、極座標での運動。などの問題では手も足も出ない様子でしたので、やはり微積は必須となります。
数学が苦手であっても、道具として使えるよう頑張りましょう。物理屋はいいかげん(と複数の教員が言っていた)なのでそこまで数学に厳密性は求めていません。なのでε-δ論法がわからないから、、と悲観的にならなくても大丈夫です。連続性だとかは設定の物理的な条件を考察して考えれば問題ないです。
ということで、力学を学ぶには微積をおさえておこうという小話でした。
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