【大学物理】初学者から上級者まで、おすすめの電磁気学演習書

物理

力学は得意だけど電磁気学はどうも苦手…という方は多いのではないでしょうか。
大学2年のときの私がまさにそれで、期末テストも危ういくらいでした。

しかし今ではむしろ得意な方になっています。
そこで今回はそんな私が、今までお世話になってきた演習書をレベル別に紹介しようと思います。

演習書を選ぶ時のポイント

電磁気学といっても内容は幅広いものです。
自分にとってどこまで学習したいのかを認識しておく必要があります。

たとえば同じ電磁気学でも

  • マクスウェル方程式を導出して終了
  • マクスウェル方程式から電磁波の存在を証明して終了
  • 電磁波の伝搬や放射を学んで終了
  • 古典的な電磁気学を一通り学習し、相対論の手前で終了

などと学習範囲が異なる場合が多いです。
私の大学では、2年次に「マクスウェル方程式から電磁波を示す。」までが範囲で、3年次に電磁波の性質を学び、相対論に突入するという過程を採用していました。つまり古典的な電磁気学は一通り学んだというスタンスです。

古典力学に比べて電磁気学は数学的なテクニックを必要とする場面が多いのですが、電磁波に関する内容でも複素積分やフーリエ変換を使ったりと、さらにその難易度が上がります。

そのため自分の学習範囲を超えているほどの演習書を買ってしまうと宝の持ち腐れ状態になってしまいかねませんし、自分の学習範囲より狭いと当然学ぶべきことを学べないことになってしまいますので、そのへんはしっかり自分で見極めるようにしましょう。

この記事ではレベル別に演習所を紹介していきます。

Step1 基礎固め・マクスウェル方程式‣電磁波の基本性質

マセマ 演習電磁気学

この本の特徴
  • 基礎をサクッと勉強できる
  • マセマシリーズの『電磁気学』と平行して学習できる
  • 具体的な値を扱う問題が多い
  • 基本問題が多い
  • 特に数学の解説が丁寧

多くの物理学生がお世話になったことがあるであろうマセマの演習書です。

テキスト版のわかりやすさがそのまま演習書になったという感じです。
問題数は少ないですが、解説が丁寧で、特に式変形や数学の説明がとても親切です。式変形の合間に「○○を用いた」などの説明があるため、数学でのつまづきが少なくなります。

しかし、マセマ特有のフォントを使用しており、まれに太字なのかわからずベクトルなのかスカラーなのかの判断がつきにくいことがあるため、私はあまりお世話になりませんでした。

物理入門コース 例解電磁気学演習

この本の特徴
  • 物理入門コースのテキストと並行して学習できる
  • チャート式の感覚で学習できる

岩波書店から出ている物理入門コースは大変有名なテキストですが、実は演習書もあるんです。

演習しよう 電磁気学

この本の特徴
  • 期末試験や大学院試験対策に向いている
  • 解説が丁寧
  • 読みやすいレイアウトになっている
  • 難易度が設定されているので取り組みやすい
  • 電磁波の放射に関する内容は少なめ

この「演習しよう」のシリーズは個人的に1番のおすすめで、その特徴はなんと言っても期末・大学院試験を見据えて書かれているということでしょう。

大学図書館に置いている演習書を手にした方ならうなずいていただけると思うのですが、演習書の中には「こんなマニアックな問題いつ使うんだろう?」と思える問題や、「こんなの解けっこないでしょ」というような問題がゴロゴロ出てくるような本があります。

さらにそれだけでなく、解答例や解説があまりにも不親切な演習書も存在します。試験対策にと本を開いてみたらそんな問題が載っていたら勉強のやる気なんて起きないというものです。

しかしこの「演習しよう」は実際の試験に出てくるような問題が豊富にあります。解答例や解説も丁寧に書かれており、つまづくポイントが少なくなります。

Step2 大学院試験対策・電磁波の伝搬・放射

新訂版 電磁気学演習

この本の特徴
  • 演習書としてベーシックな1冊
  • 高校数学でお世話になったチャート式の感覚で使える

これぞTHE演習書といった1冊。
物理学の演習書の中ではこのシリーズは有名なのではないでしょうか。私の研究室にはこのシリーズの本が4冊(力学・電磁気学・熱統計・量子力学)しっかりそろっています。

この演習書のレイアウトは、例えるなら高校数学の「チャート式」のようになっています。つまり、基礎事項のまとめが最初に書かれており、ページ上段に設問、その下に指針と解答が載っている。という具合です。

このように設問のすぐ下に解答が載っていると採点が楽で便利です。
さらにその下には発展問題がありますし、小末問題もあるので問題数も問題ないくらいです。

テキストコース 電磁気学演習

この本の特徴
  • 問題だけでなく教科書としても使える
  • 別冊で『電磁気学』もあるので平行して使える
  • コンパクトなので通学時間に読むことが出来る

『理論電磁気学』で有名な砂川さんの本です。

演習しよう 電磁気学

この本の特徴
  • 期末試験や大学院試験対策に向いている
  • 解説が丁寧
  • 読みやすいレイアウトになっている
  • 難易度が設定されているので取り組みやすい
  • 電磁波の放射に関する内容は少なめ

問題の範囲としては電磁波の伝搬・放射も取り扱っているため、こちらの方にも再かつします。

Step3 さらに学びたい人向け・相対論対応

大学演習 電磁気学

この本の特徴
  • MKSA、CGS両方での説明がなされている
  • 問題が豊富
  • 院試対策にも使える
  • 難易度が書かれているので取り組みやすい

『大学演習シリーズ』というと久保亮五先生の『熱学-統計力学』が有名ですが、電磁気学も両書であると思います。内容が豊富で、

個人的に気に入っているポイントは「MKSA、CGS単位系の両方で解説が書かれている」ことです。

世にある演習書・テキストのほとんどは単位系を統一して説明が進んでいきます。まぁそれが普通ではあるので、問題はないのですが、それだけにこの演習書はレアであると言えます。

私は宇宙物理を専門としているのですが、宇宙物理や天文学はいまだに「CGS単位系」という単位を使っています。(今では物理学のほとんどの分野でMKSA単位系が主流となっている)。

そのためCGSで勉強していると、見慣れない部分に係数が出てきたりします。その場でうまく変換すれば良いのでしょうが、個人的にそれが中々面倒だったりするので、あらかじめCGSで解説されている本があった方が楽だったりするわけです。

詳解 電磁気学演習

この本の特徴
  • とにかく問題量が多い
  • 問題集の辞書としても使える
  • 電磁気学において幅広い内容が取り扱われている
  • 難しい

ネットで「電磁気学 演習書 おすすめ」と検索したときに出てくるサイトのほとんどで紹介されている演習書です。まえがきによると問題数が1000問近くあるという、電磁気学の問題集では一番のボリュームをほこると思われます。

しかしその量を説ききるのはあまり現実的ではないというのと、解答・解説が丁寧ではないのでこれをメインとして使うのはあまりおすすめできません。

演習の辞書的な使い方が一番適していると思います。実際私は、院試の過去問を解くときにそのような使い方をしました。

プラズマや真空管回路、トランジスタ回路の問題も章立てされていますので、より専門的な演習に取り組みたい方も参考に出来るような1冊です。

結局おすすめはどれなの?

結局のおすすめがどれかと言われると、「演習しよう 電磁気学」をすすめたいです。

しかしおすすめの演習書といっても誰に勧めるか、で大きく変わってくるのでなんとも言えないのが現実です。

ひとまず電磁気学の演習書を入手したいのであれば「演習しよう 電磁気学」。
『マセマ』や『物理入門コース』などの持ち合わせのテキストがあるならば、同じシリーズの演習書をセットで購入した方が良いでしょう。電磁気学を究めたいのであれば「詳解電磁気学」。など個人個人の目的やレベルに合わせて演習書を選ぶのが一番だと思います。

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