理系の本棚-統計力学のおすすめ参考書・演習書

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バッブル
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統計力学って正直何をやってるのかよくわからない

どう応用していくんだろう

これははじめて統計力学を勉強したときの自分の感想です。

当時は教員の講義資料のみを参考にして講義を受けていたのですが、何をやっているのかさっぱりわかりませんでした。そのため参考書を借りようと図書館へ行ったのですが、力学や電磁気学と違って冊数があからさまに少なく、丁度良い参考書がなくて悩んだこともありました。

しかし最近出版された本は易しくて参考になる本が多い印象にありました。

そこで今回は統計力学のおすすめの参考書と演習書を紹介しようと思います。

統計力学はやたら難しい

物理学徒の皆さん、物理学の中で一番難しいと思うのは何ですか?

私の周りでは量子力学と電磁気学、と答える学生がとても多かったです。

確かに量子力学は直感的には信じられないような現象が起こっていますし、電磁気学は扱う数学の難易度しかり、問題のパターンも多いので難しいと感じますよね。

私はというと「統計力学」が一番難しく感じました。

そんな統計力学に苦戦したものの、大学院試験の統計力学では全問解くことの出来た私が統計力学の勉強で使った参考書と演習書を紹介します。

まずは選び方を確認

  • はじめたばかり→レベル1
  • 苦手意識が強い→レベル1
  • 一通り勉強した→レベル2
  • 演習、試験対策→演習書

まずこの記事を読むに当たって、選ぶ参考書のレベル分けを私なりにしましたので、一度確認をしましょう。

初学者や、統計力学への苦手意識が強い方はまずレベル1を参考にするのが良いでしょう。レベル1では統計力学を一通り学ぶことを念頭に置いていると思ってください。こういうことをこんな流れで学ぶ、こんな用語が出てくる。数学はこれを使う。というのを把握しましょう。

それができるようになったら、レベル2に進みます。

ここではレベル1での内容を深掘りするイメージです。

その分扱う内容も難しくなり、抽象的に感じることも多くなると思います。しかしこのレベルの本を読み込むことで理解が一気に深まります。視野が開けてくるとでも表現すれば良いのでしょうか。これまで引っかかっていた内容がスッと入ってくることがあります。

レベル1

ビジュアルアプローチ 熱・統計力学

予備校の先生が大学物理の参考書を書いたという「ビジュアルアプローチ」シリーズの1つです。まるで高校物理の教科書のようなビジュアルで、大学物理特有の堅物感が感じられません。

図やイラストが豊富なのでイメージをつかみやすいです。

しかしこのシリーズは標準的な物理学のテキストと比べて、ボリュームが圧倒的に少ないため、あくまで入門・統計力学の全体像をつかむという目的で読んだ方が良いでしょう。こういったワンクッションを挟むことが大事です。

マセマ 統計力学

おなじみのマセマ出版から、統計力学です。
ほかの分野でもマセマシリーズを愛用している方であれば迷いなくこちらを選ぶことでしょう。

マセマシリーズの大きな特徴は式変形の丁寧さや、数学の説明の丁寧さにあると思います。統計力学ではΓ関数やガウス積分、無限積分などなど高度な数学を用いることになります。大半は暗記したりすることで乗り切ることが出来るのですが、マセマは暗記に頼ることなく1つ1つ丁寧に説明してくれます。

ビジュアルアプローチが熱力学と統計力学で1冊だったのに比べ、マセマは統計力学で1冊構成なので、網羅性も中々のものです。プランク関数やシュテファンボルツマンの法則の導出も書かれているので大学の期末テストなどにも対応できそうです。

レベル2

田崎晴明 統計力学Ⅰ・Ⅱ

私いちおしの統計力学のテキストです。

始めて統計力学を学んだときは「どうもごまかされている感じがする」「狐につままれている感じがするなぁ」という感想があったのですが、田崎先生の統計力学を熟読したところ統計力学を大幅に理解することが出来ました。

レベル2としていますが、初めて読むには何度が高いと思います。
私自身この本を10回近く読み返すだけでなく、前述のビジュアルアプローチだったり演習を繰り返したりするうちに統計力学を理解できるようになりました。

そこまで統計力学をやりこんだからこそ思ったのですが、田崎先生の本が一番ごまかしが少ないと感じます。注釈や脚注が多く、統計力学が何をしようとしているのかがわかりやすいです。

カノニカル分布の応用や実例が取り上げられていますが、似たような内容がそのまま問題として院試の過去問でお目にかかることも少なくないので、演習の面でも参考になります。

ライフ 統計熱物理学の基礎 上・中・下

「統計力学 参考書 おすすめ」と検索して出てくるサイトではあまり紹介されていないテキストですが、個人的に大変良書だと思います。

上・中・下巻の3巻構成となっています。
上巻は熱力学をメインに、上巻の後半から統計力学に入ってきます。
統計力学を勉強したい方は上巻と中巻を読むと良いでしょう。

下巻には輸送理論や非可逆過程での内容がメインとなっていますので、大学院試を考えている方は中巻までで大丈夫でしょう。[1]院試を受験する方は受験大学院の過去問題を参考にして出題内容を確認してください

物理入門コース 熱・統計力学

おなじみの物理入門コースの本で、上の2冊と比較するとやや易しめです。

標準的な内容で、数学も丁寧に解説しているのがポイントです。ただ統計力学の内容は上2冊にくらべると網羅性に欠けるのが難点。

しかしレベル2の中でも平易でとっかかりやすい内容なので、上2冊でつまづいたらこちらを読むというのも良いかもしれません。

前半が熱力学の内容なので、熱力学とのつながりを意識しながら学べるのもポイント。さらに同じシリーズから演習書も出ているので演習にもつなげやすいです。

講談社基礎物理学シリーズ 統計力学

講談社の基礎物理学シリーズは比較的新しめの本で、読みやすいレイアウトであるのが特徴

田崎先生の統計力学を読み込んでからこの本を知ったので熟読していません。見やすいレイアウトなのでとっかかりやすいうえ、内容も多かったのでもっと早く出会いたかった本です。

統計力学の演習書

ここからは演習書のおすすめです。

演習しよう 熱・統計力学

イチオシの演習書です。電磁気学でもこちらのシリーズをおすすめしています。

統計力学の授業を受けているときはどんな問題が出るのか全然想像がつかず、要点を押さえることが出来なかったり、統計力学を使ってどんなことができるのかが漠然としていました。

しかしこの演習書は、試験対策を念頭におかれているため、期末試験はもちろん大学院試験対策としても使えます

大学演習 熱学・統計力学

熱力学、統計力学の演習書では1番有名と言っても過言ではないのがこの本です。

問題の数がほかの演習書の比にならないくらいに豊富なのが最大の特徴で、演習問題の辞書的な使い方も出来ます。この本に掲載されている問題すべてを解くというのはさすがに現実的ではないかもしれませんが、難易度分けがされているので解くべき問題を定めやすいです。

サイエンス社 演習 熱・統計力学

おなじみサイエンス社さんから出ている演習本です。

ところどころ誤植がありますが、この本は標準的な演習書でおすすめです。

レイアウトが、高校数学の問題集でよく知られている「チャート式」のようにページ上部に例題が載っていて、ページ下にさらに練習問題が課される形式になっています。そのため馴染みがあって使いやすい本であるとも言えますね。

例解 熱・統計力学

先ほど紹介した「物理入門コース 熱・統計力学」の演習書です。

問題数は多いわけではなく、むしろこの中だと少ない方ですが、解答解説が丁寧な印象です。なにより物理入門コースと併用して統計力学を勉強できるというメリットがあるので、スタンスを合わせて学びたい方におすすめです。

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References

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1 院試を受験する方は受験大学院の過去問題を参考にして出題内容を確認してください

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